認知症をあきらめない @」 
                        川久保病院 (内科)

                        阿部 佳子(よしこ)医師
  
     私、認知症じゃないかな? 最近 物忘れがひどいんです。・・・
   
   こんな患者さんが結構おられます。もちろん検査もします。CTやMRI検査をすることもあります。

  治せる認知症があるからです。物忘れと認知症は違います。
  
  日常生活ができなくなるのが認知症です。物忘れは仕方ありません。
  
  神経衰弱というトランプゲームがあります。4歳児に勝てる中学生はあまりいません。カメラのフィルムのよう

  に意味のないことを記憶する力は中学生でも既に衰えています。年を重ねるにつれ、新しいことの記憶は理

  由や理屈を積み重ねないと難しいものです。

  ずっとお米を作ってきた方が一念発起してパソコンに挑戦。なかなか覚えられない・・無理のない事です。

  しかし、この方が稲と雑草の区別がつかなくなって稲を抜き始めたら認知症が心配になってきます。

  また、ずっとご飯の支度をしてきたお母さんがみそ汁に砂糖を入れたら、やはり心配になります。

        
          医師 : 朝ご飯は食べましたか?
          患者 : 豆腐とわかめの味噌汁、ご飯、卵焼き、トマト、もう一つあったような・・・。
          医師 : 緑がないですね
          患者 : そうそう ほうれん草のおひたし・・。
         

  体験の一部を忘れるのは物忘れです。ヒントをもらうと思いだせます。認知症では「私、ご飯食べたっけ?」

  となります。ヒントも役にたちません。認知症の一番大きな原因は何でしょう?年齢です。

  高齢化がどんどん進んでいる今、この先も認知症はどんどん増え続けます。




    
      「認知症をあきらめない A」 
                        川久保病院 (内科)

                        阿部 佳子(よしこ)医師
  予防できる認知症があります。脳血管障害性認知症です。これは、生活習慣病が原因になります。

 高血圧・高脂血症・糖尿病・高尿酸血症です。人間ドックや自治体検診もそれらの早期発見を目標の一つとして

 います。食習慣・運動習慣もとても大事な事なので、放置せずにキチンと治療しましょう。

  治せる認知症があります。急に進行する認知症はその可能性が高いです。わずかな衝撃で頭蓋骨と脳実質

 の間に静脈性の出血が溜まる慢性硬膜下血腫です。出血塊を取り除けば治る高齢者に多い認知症です。

  原因不明で脳細胞が死んでいくのがアルツハイマー病です。一番のリスクアクター(危険因子)は年齢です。

 人口の高齢化に伴い、どんどん増え続けると予測されています。

  アルツハイマー病は、年齢相応の物忘れから始まります。 慣れた場所では大丈夫なのに、非日常の場所や

 お客様への対応ができなくなります。 季節に合った服装が選べなくなると次に失禁が始まります。

  いずれ、言葉も失い、寝たきりになります。 この順番で進むのは、壊れていく細胞の順番が決まっているか

 らです。 分かっていれば、最近服装が変だなと思ったら、オムツの準備と心の準備をすればいいのです。

  認知症の介護で困るのは、妄想・介護への抵抗・不潔行動・徘徊などのいわゆる問題行動です。

 全く問題行動なく寝たきりになる方も物忘れの段階から問題行動を発症される方もあります。

 問題行動は残った細胞の興奮で起こるからです。 プライド・感情が残ります。

  「眼鏡どこ置いたっけ?」 「またぁ!」 患者さんの中に記憶されるのは、この人は困った時に私の味方

 をしてくれないということ。 トイレで失敗したら、見つからないように新しい衣類を入れてある引き出しに

 隠してしまいます。 自分で始末しようとして、もっとひどい事になってしまいます。

  いつも患者さんが落ち着いた表情でいられる介護の工夫で問題行動はある程度避けられます。

 「娘の私の名前も忘れちゃってね、ふふふ・・」とほほ笑むことができる余裕のあるほうが 患者さんも介護

 者さんも気持ちが楽になりますね。
 

 
   
 
  「認知症をあきらめない B」
   
                        川久保病院 (内科)

                        阿部 佳子(よしこ)医師
       
 
   神経内科が扱う疾患群の中に変性疾患があります。 同じ働きをする一群の神経細胞が原因不明で死んでい

 く病気です。 原因不明で死ぬというと恐ろしい響きですが、細胞の死と人の死は別です。寿命に係わらない

 場合も多くあります。原因がわからないので根本的な治療は未だ見つかっていない場合が多いのですが、症 

 状に対する対症療法は日進月歩で進んでいます。
 
  例を挙げると、運動の細かい調節をする細胞群が侵されるパーキンソン病、運動神経だけが侵される筋委

 縮性側策硬化症(ALS)、そして、大脳の神経細胞が死んでいく認知症です。

  認知症には、アルツハイマー病が一番多いですが、ほかにレビー小体型認知症(以後DLBと略します)、前頭

 側頭型認知症(FTD)などがあります。

  DLBではアルツハイマー型認知症((以後ADと略します)に比べると初期には記憶障害が目立たないことが

 多いです。 幻視、睡眠中の大声などの異常行動、ふるえ、動きの鈍さなどのパーキンソン症状などを特徴と

 します。 それぞれの症状に対する対症療法(内服治療や行動療法)がある程度効果的です。

  FTDはADやDLBと比べると若年発症が多く、80歳を超えての発症は稀です。 記憶障害より異常行動が先

 行します。 周りの反応や自分の行為の結果に無関心になるため、万引き・信号無視・高速道路の逆走などを

 引き起こします。
 
  ある患者さんは、目に入る電気のコードをすべてハサミで切ってしまいました。 罪悪感や他人の迷惑を考

 えません。 他に毎日同じ場所を疲れて倒れるまで徘徊するなどの常道行為、目の前の食べ物を全部食べて

 しまい、生のジャガイモまで食べてしまうなどの食行動の異常がみられます。

  反社会的な行動も多く、介護されるご家族がうつ状態に陥ることも多い認知症です。

 薬物療法・介護支援が必須の疾患です。