食中毒にご注意!」 
                      川久保病院 (内科科長)

                      伊藤 雅天(まさたか)医師
   「夏は食中毒の季節です!」と言いたいところですが、実は食中毒は一年中起こります。

  食中毒の原因の第1位はノロウィルスで、近年はそこかしこで集団発生しています。

  カキの生食で感染したり、既に感染発症して嘔吐・下痢している人の介護や後始末で二次感染します。

  感染力が非常に強いため次々発症するのが特徴です。
ウィルス消毒にアルコールは無効で、吐物やトイレなどの

  掃除消毒には
ハイタ-などの次亜塩素酸、そして衛生的な手洗いが必要です

  食品は85度で1分以上加熱すれば安全に食べる事ができます。

   第2位はカンピロバクター、特に加熱不十分な焼き鳥や鶏唐揚げで起こることが多いです。

  ある調査では、カット鶏肉の60%以上からカンピロバクターが検出されたそうです。ただし、加熱に弱く70度で

  1分以上加熱すれば殺菌できます。

   第3位がウェルシュ菌、カレーやシチューのように大きな鍋で大量に作った後、常温で放置した食べ物の中で

  増殖する菌です。この菌は土の中にいて野菜などの食材に付いて鍋に入り、加熱調理中は「芽胞」と呼ばれる

  状態でしぶとく生き残り、冷めはじめて55度〜20度ほどになると増殖します。残ったカレーは鍋のまま放置、冷め

  てから冷蔵庫にしまう事が多いでしょうが、その数時間で食中毒を起こす量に大増殖してしまうのです。一旦増

  殖してしまったら再度加熱しても殺菌できません。この一晩置いたカレーを食べた後、次の日あたりに嘔吐・下痢

  が始まりますが、通常は1〜2日で自然に治り、重症化することは少ないです。

  頻度は低いですがセレウス菌という菌も同じように熱に強い菌で、チャーハンや焼きそばのような炒め物の残りを

  常温放置すると増殖して嘔吐・下痢を起こします。作った時に食べきるのが原則ですが、どうしても残すなら常温

  放置しない、小分けにして短時間で冷まして冷蔵保存するようにしましょう。

   第4位はサルモネラ菌、一般に、この菌は鶏卵についていると言われますが日本の市販の卵なら出荷前に

  洗浄されていますので、確率的には0.2%程度です。それよりも見落としがちなのが「トカゲやカメなどの爬虫類」

  です。爬虫類は5割以上がサルモネラ菌を保有していると言われており、特に子どもがトカゲやカメに触ったら、

  よく手を洗うことが必要です。

   第5位は大腸菌、そのうちの病原性大腸菌、腸管出血性のO157などの毒素を作る菌について説明します。

  菌を保菌している牛などの家畜の糞便に汚染された食肉からの二次汚染であらゆる食品が原因となる可能性が

  あって、過去には牛レバー、焼き肉、ユッケのような肉の他、井戸水、サラダ、和え物、浅漬けなどで集団感染が

  発生しました。主に加熱不十分な食材が原因になりますが、数にして100個程度の菌が身体の中に入っただけ

  でも発症します。これまで紹介したような他の食中毒では100万個以上の菌が身体の中に入らないと発症しませ

  んから、この菌の感染力が特に強いことがわかります。潜伏期間は平均3〜5日、症状は激しい腹痛で始まり、数

  時間後に水様下痢、1〜2日後に血性下痢。溶血性尿毒症(HUS)や脳障害を併発すると重症の場合は命にかか

  わります。予防が特に大切で、生野菜はよく洗うこと。熱には強くないので食肉なら中心部まで75度以上で1分以

  上の加熱調理すること。焼肉の時は、トング・箸を使い分けることが大切です。

   今回紹介した原因以外にも注意すべき細菌やウイルスはたくさんありますが、食中毒対策の基本の3原則を

  守れば安心です。  @ 菌をつけない(手袋を使う、食材を洗う、まな板や包丁を使い分けるなど)

               A 菌を増やさない(増えやすい温度帯で放置しない)

               B 菌をやっつける(加熱・アルコールや次亜塩素酸などで消毒する)

    細菌やウィルスは目で見えませんが、それぞれの菌の特徴を理解して対処すれば、食中毒を防ぐことが

   可能です。安心しておいしく食べられるよう、原則を守って食中毒を予防しましょう。