書籍名:
 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」  
  

スベトラーナ・アレクシェービッチ著/松本妙子訳
                   /岩波書店


  衝撃の一冊です。心に深く残り、考えさせられる本として。

作者は、2014年のノーベル文学賞受賞者スベトラーナ・アレクシェービッチ。

小説ではありません。ドキュメントです。チェルノブイリ原発事故に関わる多くの

証言集です。

チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月26日。場所は旧ソ連、現在のウク

ライナとベラルーシの国境付近。もっとも放射能に汚染されたのがベラルーシ。

彼女はベラルーシの人。

事故後すぐに取材を試みたそうですが、断念し、7年くらいたってから取材を再開し、

1996年、事故から10年後、本になったようです。

 取材した人は300人くらい、本には30人くらいの証言が載っています。

家族を亡くした人、事故処理活動に参加した人、科学者、役人、教師、子どもなど

様々な人々の証言が続きます。

知識の格差、責任感の格差、戸惑いと悲しみとやりきれなさ。作者の取材力と執念

を感じます。

最初に28ページに及ぶ長い証言があります。事故直後に招集され、駆けつけて2週

間後に亡くなった消防士の妻の証言です。

入院先で夫を「人間ではない。放射性物体」「原子炉」だから触れてはならないと

止められても、崩れゆく夫の身体を愛撫し続け、愛する夫に最期まで人間として

接した姿から「人間の尊厳」ということを考えずにはいられませんでした。

                          (鈴木 満/河南支部)