北御門二郎は熊本県の地主の二男として生まれ、旧制高校の時、友人宅で手にしたトルストイの本と出あい、激しく心を揺さぶられ、自立した人間としての生き方を追求するようになりました。東大入学後も国中が戦争に熱中するなか、トルストイの言う絶対非暴力、絶対平和の思想を貫こうと決意し、25歳の時、「人を殺すくらいなら、殺されるほうを選ぶ」と主張し、死刑覚悟で徴兵検査を拒否しました。
その後、妻のヨモさんという伴侶を得て、熊本県の山奥で農業者としての生活をはじめ、60歳になるころトルストイの膨大な作品の翻訳にとりかかり、晩年は講演活動を行い91歳で生涯を閉じました。
本書は、二郎との対談や二郎に影響を与えたトルストイの生涯にも触れ、興味深く読むことができます。特に印象に残ったのは、新憲法が公布された時の喜びと憲法9条の意義について語っている場面です。
日本は今、集団的自衛権の名のもと、米国とともに世界中のどこでも戦争ができる国づくりを進めていこうとしています。二郎は今を生きる私たちに「主権者としての覚悟をもって生きよ」という強力なメッセージを放っているように思えてなりません。二郎が翻訳したトルストイの本も読んでみたくなりました。

                    (高橋貴志子/夕顔瀬支部)