書籍名:
 「
〜亡き妻が遺した「微笑みの村」での村医十九年〜
      無医村に花は微笑む 」  
  

      将基面(しょうぎめん)誠 著 / ごま書房


  全国的には、医師過剰が時々報じられているが岩手の医師充足率は、県央部を除いて

依然として厳しい現状が続いている。
 
そんな中、当時の沢内村の深澤村長を中心とする村政の苦闘を描いた「自分たちの生命

を守った村」の記述に触発されて、無医村の医療を担いたいという固い決意で、岩手に

勤務した医師がいた。
 
 その名は、将基面 誠(しょうぎめん まこと)先生。

 紹介され勤務したのは、県北・田野畑村の国保直営診療所。そして、この地で昭和

57年から平成13年までの19年間を、正に医師としての最も充実した年月を、岩手の一地

域医療に捧げつくしたその壮絶ともいえる半生に、心から「ありがとう」と頭を垂れた

い。
 将基面誠先生は、千葉県がんセンターの医長から田野畑村になぜ着任したのか。無医

村だからと言い切る。昭和40年僅か36歳の若さで田野畑村長になって、熱く教育立村を

スローガンに田野畑の未来に心血を注ぐ星野仙平氏の存在も大きかったと想像に難くな

い。

 奥様の春代さんが、寒村・田野畑には花が少ないと言ったこともあり、梅の苗木を千

葉から運び、村のいたる所に植樹し、村人との交流を深めたその心意気が、痛いほど伝

わる。しかし、奥様は着任7年目の平成元年、病で45歳の生涯を閉じた。何という運命

の悪戯。

 奥様の葬儀には、田野畑から千葉・木更津へバス7台で8時間強、200人を超す村人が

駆け付けて、落涙を共にしたという。言葉に表せない先生への尊敬の念が、200人もの

心を南に向かわせたのだろう。
 
 岩手が抱える地域医療・介護の未来を考える基として、病診連携に身を挺して示した

先生の心を是非一読してほしい本である。

                      (平野 勝彦/本町・上田支部)