書籍名:

  「なぜ日本は、
    精神科病院の数が
       世界一なのか」  
               
        織田 淳太郎著 

    宝島社新書
 

 この著者は、ひょんなことから、とある地方の精神病院に入院したことをきっかけに、精神病院を

(つい)の棲家」とする長期入院者のほとんどが、ごく普通の人たちであることを知った。彼らとの

約3週間にわたる閉ざされた暮らしの中で、長期入院者の背後で何が進行してきたのかをまとめた

のが前書「精神病院に葬られた人びと 潜入ルポ 社会的入院」(光文社新書)

おびただしい数の「入院加療の必要がない」長期入院者を今日まで生産してきた、国や精神病院に

対する犯罪性の告発ともいうべきノンフィクションである。

 それに続くのが本書。東日本大震災と原発事故との二重の災禍に見舞われ、閉鎖に追い込まれ

た福島県の精神病院の「入院加療の必要がない」長期入院者の追跡からはじまる。

多くの肉親に見捨てられ、精神病院の「固定資産」として生きざるを得ず「終の棲家」まで失った彼ら。

震災からの復興や絆ばかりがクローズアップされ、彼らに関しての報道がほとんど皆無ななか、精神

医療の暗部を白日の下にさらした。
 
 さらに、日本の精神病院数は、全世界の5分の1、約35万もの病床を有しており、戦後確実に病床

を減らしている欧米などの流れとは対極にある異常性を指摘している。

社会的入院の解消を国策として掲げながら、精神入院者に対する人権を無視した無慈悲な扱いが

なくならないのは、精神医療の元凶「保護者制度」にあることをさらに厳しく告発した。

                                     黒澤 誠 / 太田支部