盛岡が舞台の一つになった浅田次郎の「壬生義士伝」が出版されたのは2000年のこと。何度読んでも3ページに1回の割合で涙があふれます。昔から弱い涙腺ですが、年をおうごとにますます弱くなっています。
 涙腺が弱い私がご紹介する本書は、心あたたまるいい話、思いやりの気持ちがわいてくる話、胸にジーンとくる話、生きるって本当に素晴らしいことなんだと思える実話が満載です。実際の体験から生まれた物語には人の心を揺り動かす、感動のネタがあるのでしょう。
 例えば「一杯のちゃんぽん」。お年寄りが病気のため外出できず、たった一杯ですまないがと出前を頼んだところ、いつもは一杯だと断っていた店主は病気で外出できないならばと、注文をうけた。数日して容れもの返しに息子が来店、「母は体調が悪化し、昨日亡くなりました。最後に食べたのはこのお店の一杯のちゃんぽんでした。おいしい、おいしいと言っていたので、母は幸せでした。ありがとうございました」と。注文を断らず配達してあげて良かった。一杯のちゃんぽんでも人を幸せにできるのだ、と店主は思った。忙しさや煩わしさのあまり、つい自分のことだけに目を奪われがちな毎日。でも、ちょっと足を止めて、深呼吸してみる。すると、自分を支えてくれている、後押ししてくれている温かい眼差しがあることに気づかされます。
 涙がこぼれる感動のおすそ分けの1冊です。

                             (安ヶ平公/見前西支部)