糖尿病患者は
歯周病が重症化しやすい


 糖尿病の慢性合併症の一つに歯周病があります。糖尿病の人は、健康な人に比べて歯周病にかかっている率が高く、しかも重症化しやすく、残っている歯が少ないことがわかっています。
 最大の原因は、唾液量の減少による口腔乾燥や免疫力の低下です。

歯周病治療・管理で
血糖値が低下


 糖尿病治療の基本は、適切な「食事」と「運動」ですが、歯周病の症状が進行し、歯を失ってしまうと、あまり嚙まなくていい、軟らかな食品に偏りがちになります。軟らかな食品にはブドウ糖などの吸収がはやい糖質が多く含まれているものが多く、血糖値を急激に上げる危険があります。
 よく噛んで食事をとると、食べ過ぎを防止し、少ない量でも満腹感が得られるようになります。
 さらに、嚙みごたえのある食品の中には食物繊維が多く、脂質や糖質の少ないものが多くあり、食物繊維は食品中の脂肪や糖質の吸収を遅くする効果があります。
 そして、糖尿病患者が歯周病の治療・管理することにより血糖値が下がりはじめる、と言われ始めています。

糖尿病患者は
歯周病に人一倍の注意を


 糖尿病の血糖値を下げるのはインスリンですが、歯周病によって生じる炎症の際、インスリンの働きを弱める物質が発生します。そのため、重度の歯周病の場合、炎症症状が強いので、糖尿病治療をしてもなかなか血糖値が下がらないというわけです。糖尿病の人は、歯周病の予防管理と治療が、人一倍の注意が必要です。もちろん、前提はきちんとした血糖コントロールです。
 糖尿病と歯周病、双方を治療することによって相乗効果が生まれ、より早く治療の効果が得られることでしょう。
 歯医者に行くときは糖尿病連携手帳などを持参し、糖尿病であることをしっかり伝えましょう。
  
                                       (歯科医師 田村栄樹)

          【「TamTam’s「胃腸と歯は大事ですよ!」は、今回をもって、終了します。】




  大腸にも、いろいろな病気がでてきます。大腸ガン、ポリープ、痔、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸憩室、粘膜下腫瘍…などたくさんの病気がありますが、今回はなじみの深いポリープのお話をします。
  ポリープは粘膜の一部が異常に盛り上がってできたものですが、でき方により2種類に分かれます。
1 過形成ポリープ

 粘膜の細胞に訳があって増殖(過形成)したため、全体として膨らんだ状態になったポリープです。訳というのはいろいろで、何らかのただれだったり、腸の動きによってひっぱられてできたりします。もともと正常な細胞が部分的に増えただけですので、まずガンになったりはしません。

2 腺腫性ポリープ

 もう一つは腺腫といって、変化した細胞が勝手に増えて、ポリープという形になったものです。細胞一つひとつの様子によって正常な細胞に近いものからがんに近いものまであります。この形のポリープは小さいうちは正常細胞に近かったものでも、大きくなるとガンに変化していくものもあります。ぜひガンになる前にとってしまった方がいいです。

3 ガン

 ポリープからガンに変化したものとは別に、最初から大腸ガンとして発生するものもあります。小さいうちから進行しやすく、早期発見しないと大変なことになってしまいます。ガンとわかれば、ポリープとはいいません。
 川久保病院では、大腸がん検診でその疑いがあるときには、まず、大腸の内視鏡検査をします。そしてポリープがみつかった場合、1泊2日での入院のうえ再度内視鏡を使用して切除治療をおこなっています。最初の検査では対象部分をしっかり見ることに重点をおき、切除のときには安全に取り切ることに重点をおくため、2回に分ける必要があるのです。
 ただし、皆さんとしては、ポリープはすぐにとってほしい、というのが正直なところだと思います。5㎜以下の小さなポリープに関しては特殊な切除具により検査のときにとってしまうことも始めました。詳しくは、当院の外来にいらしたときに説明します。
    
                                           (内科医 田村茂)
   

図:特殊な切除具(スネア)



 前回は、口から食べることで、脳を刺激して認知症を予防することができる、というお話をしました。今回は、多くの歯があることで、さらに認知症を予防することができる、というお話です。
歯を失えば 歯根膜もなくなる

 皆さんは「歯根膜」って知っていますか?
 歯根膜とは、歯と骨(歯槽骨)を繋いでいる結合細胞組織で、哺乳類にしかありません。そして、とても重要な役割を果たしています。
 歯根膜にも神経が分布しており、神経の端には歯根膜受容器(センサー)があります。食べ物を咬むことや、上と下の歯があたることにより歯根膜が圧迫されたり、引っ張られることによりセンサーが刺激され、脳に伝わります。固いものや異物を咬むと歯根膜の繊維が異常に引っ張られ、センサーである受容器が感知し、即座に脳に伝えるのです。髪の毛やアサリ貝の砂などの異物が口の中に入ると、すぐに気がつくのはこのためです。
 食べ物の歯ざわりも歯根膜のセンサーによって認識されているので、歯を失えば、歯根膜もすべて無くなり、そこからの脳の刺激も皆無になってしまうのです。

自分の歯で食べられる人は 認知症になりにくい

 高齢になっても自分自身の歯で咬んで食べられる人は、総入れ歯の人に比べて認知症になりにくいというデータがあります。私自身の経験からも、90歳を超えていながら、しっかり会話のできている人の口を見せていただくと、多くの歯が残っている場合が多いです。
 今からでも構いません。虫歯や歯周病によって歯を失わないように、しっかり歯磨きしましょう。そして、おいしいものを食べて認知症にならないようがんばりましょう。

(歯科医師 田村栄樹)



 川久保病院のドックでは胃の検査のとき、内視鏡検査(胃カメラ)かバリウムを飲む検査のどちらかを選ぶことができます。内視鏡検査とバリウム検査それぞれの利点と欠点をお知らせしますので、胃の検査を受けるときの参考にしてください。

■内視鏡検査
利点 高精細の画面で胃や食道の粘膜を細かくみることができ、いろいろな胃炎や早期のがんの存在がわかります。また、鼻やのどの異常がみつかることもあります。
欠点 誰でも内視鏡を飲み込むことは苦しいですね。あまり苦しい場合には検査にならないこともありますし、内視鏡により胃やのどを痛めてしまうこともあります。
■バリウム検査
利点 バリウムを飲むだけなので苦しさは我慢できる人がほとんどです。胃の全体像がわかるので、内視鏡では発見しづらく、進行のはやいスキルスタイプのがんや胃の位置、動きなどもわかりやすいです。
欠点 異常があるかないかを調べる検査ですので、もともとポリープや胃潰瘍の既往症がある人には向きません。バリウムでつくる影絵をみての診断ですので、食道や胃の形が変わるくらいまで進行した病変でなければ発見できません。飲んだバリウムを便として排泄しなければなりませんし、放射線被ばくの問題もあります。腰が曲がった人や胃の動きの強い人は検査できないこともあります。

 これをみて、皆さん悩まれると思いますが、一般的には、「内視鏡検査」と「バリウム検査」を隔年で受けるのが、望ましいとされています。

(内科医 田村茂)

 

 バリウム検査



【胃がん】

不整な形や周囲のヒダの形、胃の全体像など客観的によく分かります。
          
       内視鏡検査

 【早期胃がん】
 バリウム検査では発見できない段階のがんでもみつけることができます。
 こんにちは、川久保病院歯科の田村です。内科医の田村先生と交互に、このコラムを担当します。よろしくお願いします。
 今回は「おいしいものを食べて認知症の予防をしよう!」という衝撃的な(?)テーマでお話します。
 見出しをみて、「おいしいものを食べて認知症にならないなら苦労しないよ」って思った方は、たくさんいるでしょう。
 でも、これって満更でもない話なのです。
 体は食べることで、喜びや安心を感じるような仕組みをもっています。この仕組みは脳の中にあり、食べる動作が脳の広い範囲を刺激するため、食べることが脳の働きを活発にする、と言われています。
 それなら、おいしいものを食べて認知症を予防したい、と誰もが思うはずです。
 では、美味しい食べ物ってなんでしょうか? 人それぞれで、好みもあり、千差万別でしょう。しかし、食べ物がちがっても、おいしいと感じるのは、全員同じ脳にあります。単においしいと思ったとき、実はたくさんの条件をクリアしておいしいと感じているのです。
 ここで、「おいしいと感じる条件」です。

 おいしいと感じる条件 

・お腹の空き具合(本能)
  大好きなものでも、お腹がいっぱいだとおいしくないですよね。

・食べる前の味わい(においや見た目)
  におい(臭い・匂い)や盛り付けがよくないと、食欲をそそりませんよね。

・口にいれた際の味わい(唇・舌)
  口に頬張って全体で感じますよね。

・ 咬むことの楽しみ(咀嚼運動と口腔感覚)
  硬いもの、柔らかいもの、この食感って大事ですよね。

・味(唾液と食塊の動き)
  味わいながら唾液で包み込み、飲み込むための準備ですね。

・飲み込むことの意義
  〝のどごし〟とはよく言ったもので、あのビールの場合だけではないですよ。

 これらの条件がそろうことで、初めておいしいと感じるのです。それぞれの条件に対する反応、それとたくさん咬むことで、より広い範囲の脳を刺激します。咬んで食べるという行為は、単に体への栄養補給という点からだけ考えがちですが、口腔機能の維持や活性化にもつながり、ひいては脳への刺激が認知症の予防にも有効です。
 おいしいものを食べて認知症を予防しよう!
 そういうことで、次回(4月号)のテーマは、「歯が多くあることで、さらに認知症を予防することができる」です。

(歯科医 田村栄樹)



川久保病院には二人の田村医師がいます。内科の茂先生と歯科の栄樹先生。「胃腸と歯は大事ですよ!」をテーマに、このお二人に隔月で執筆してもらいます。今月は茂先生が「ピロリ菌」についてお話します。


 こんにちは、内科の田村です。これから数回にわたり、このコラムを担当することになりました。よろしくお願いします。
 今回は「ピロリ菌」についてお話します。ピロリ菌の大きさは0.005㎜ですので、顕微鏡でやっと見える程度です。内視鏡の検査をしていると、検査後「ピロリ菌はいましたか?」と聞かれることがありますが、さすがに最新の内視鏡でも見えません。ただ、「いそうだな」という胃の雰囲気は分かります。

ピロリ菌感染者全体40%20代10%
 その人が何時感染したかまでは分かりませんが、井戸水が原因であることや、家族内で感染が起きていることも疑われています。しかし、現在の日本では、感染する人の割合はどんどん減ってきています。かつては80%程度の人が感染していましたが、今は40%程度、20代に限れば約10%が感染しています。

ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの原因
 ピロリ菌が胃の中にいると、何が問題なのでしょう。
 一つは、胃潰瘍と十二指腸潰瘍の原因になることです。2000年からはじまった除菌治療により潰瘍が再発することは劇的に少なくなりました。これは、薬の進歩によるもので、以前は胃を切除することもあった難治性の胃潰瘍がすっかり良くなってしまう(ほとんど根治する)ようになりました。
 二つ目は胃がんです。WHO(世界保健機構)も1994年、ピロリ菌の発がん性を指摘しています。
 ピロリ菌がいると、次第に胃のひだが太くなり腫れてきたり、胃の粘膜が萎縮したり、腸の粘膜のような変化が起きたりします。そういった胃の変化を内視鏡でみると、これはピロリ菌がいそうだな、と感じるわけです。萎縮などの変化をきたした胃は、がんの発生率が高いためより注意して検診することをお勧めしています。

2013年から胃炎の除菌治療が保険対象
 2013年からピロリ菌が原因である胃炎の除菌治療が保険の対象となり、これを受ける方が増えています。このままいけば、将来、きっと日本では胃がんが大幅に減るだろうといわれています。しかし、50歳以上では、ピロリ菌に感染している方がたくさんいますので、胃がんはしばらく減ることはありません。これからも検診を受けていただく必要があります。
 胃がんを撲滅するためには、できるだけ早い時期から対策を講じる必要があります。自治体によっては、高校生の学校検診にピロリ菌検査を導入する動きもみられます。日本が世界で最初の「胃がん撲滅国」として登録されるよう、みんなでピロリ菌と闘いましょう。

  (内科医 田村茂)