糖尿病の人は「糖分を控えめに」これは鉄則のように言われています。そして、低カロリーのものを摂るように心がけておられることでしょう。多くの人にとって、糖尿病と闘っていく上で、食事制限はかなりの苦しみです。そして、特にお酒好きな人にとっては、断酒や節酒を行うことも、なかなか大変なことですよね。
 お酒は昔から「百薬の長」などと呼ばれ、健康に役立つ場合があることは知られています。実際、様ざまな文献によると、少量のアルコールには、脳こうそくや心筋こうそくなどの重大な合併症の原因となる、血管内にできる血栓を溶かす作用があると書かれています。
 では、この場合の少量とは、どれくらいをいうのでしょうか?
 それは、1 日平均純アルコールで20g 程度です。その量は、健康な方の身体にとっては良いとされています。
 これを、それぞれのお酒に換算すると、
 ・ビールなら、500ml まで
 ・ワインなら、グラスで2 杯弱まで
 ・ウイスキーなら、シングル水割り2 杯まで
 ・焼酎(25 度)なら、0.5 合まで
  ということです。
 血液の流れが悪くなる原因は色々とありますが、その一つが脱水症状です。脱水症状によって血液の粘着度が増して、ドロドロになっていくと、気を付けなければならない深刻な合併症が起こりやすい状態になります。アルコールの摂りすぎは、まさにこの脱水症状を引き起こすのです。
 アルコールは、利尿作用が大変大きく働きますよね。飲めば飲むほど、トイレにいきたくなりますよね。
 その尿によって、体内の大量の水分が失われていきます。そうすると、血液はドロドロになってきて、流れが悪くなり、糖尿病の症状が悪化するということになります。
 さらに、アルコールは食欲を増進させる働きがあります。また、糖尿病薬を服用している場合も、アルコールを摂ることにはかなり注意が必要です。薬の作用を弱めたり、逆に効きすぎてしまう、などとも言われています。インスリン注射をしている場合も同じことが言えます。
 一般に病院の食事療法の指導では、基本禁酒を言われます。糖尿病がかなり進行している場合や、動脈硬化や合併症が心配されるほどの場合も、禁酒を守るよう指示されます。一方で、少量のアルコールが許可される場合もあります。許可される大体の基準は次のとおりです。
 ・血糖値が基準値内で維持されている
 ・合併症が起きていない
 ・薬の服用やインスリン注射をしていない
 ・アルコールに依存しない(自制がきく)
  それで、もし飲酒する場合でも、毎日ではなく必ず間隔をあけること、絶対に飲みすぎないこと、こういうことがポイントです。それでも、それが難しければ、はじめから一切手をつけないことですね。
  アルコールの飲みすぎは、血液をドロドロにし、それが脳こうそくや心筋こうそくを生むと言われています。そうならないため、食事・運動療法・充分な休養でしっかり健康管理してください。これは、糖尿病でない方にも言えることです。

                                         (内科医加藤幸)
「みつばち会」会員募集
 川久保病院で糖尿病治療を受けている人と医師や看護師など職員でつくる糖尿病患者の会があります。会の名前は「みつばち会」。病気についての知識を深め、会員同士の交流などにより、病気の進行をとめることが目的。活動内容は、糖尿病患者用の専門月刊誌「さかえ」の配布、温泉地などでの「ちょこっと勉強」と交流など。現在、会員は70 人ほど。会費は
1 月300 円(年間3,600 円)。加藤幸先生は、「みつばち会」の顧問医師です。
会員になりたい方は、川久保病院内科外来の看護師にお申し出ください。


  2010 年に米国で、糖尿病は癌の発症と関係があると報告されました。日本でも、日本糖尿病学会と日本癌学会が行った調査で、糖尿病があると癌にかかりやすくなることが分かりました。つまり、癌も糖尿病の重大な合併症の一つと考えられるのです。
  この報告によると、糖尿病の方は糖尿病でない方に比べて、癌のリスクが2 割ほど高くなっています。特に、膵臓癌や肝臓癌では2 倍、大腸癌では1.4倍です。一方、乳癌や前立腺癌では糖尿病との関係は認められませんでした。
  では、なぜ糖尿病で癌が増えるのでしょうか? 糖尿病があると癌にかかりやすくなる理由は、完全には分かっているわけではありません。
  主要な理由の一つは、糖尿病と切っても切れない関係にあるインスリンが関わっていると考えられています。血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが不足すると、それを補うために血中のインスリン濃度が高くなったり(高インスリン血症)、IGF-1(インスリン様成長因子-1)が増加します。インスリンやIGF-1 には、細胞の増殖を促す作用があるので、糖尿病の方の場合、発癌のリスクが高まると考えられています。肥満や運動不足でも、多くの場合、高インスリン血症が引き起こされるので、肥満や運動不足との関連が強い癌では、同様のメカニズムが考えられています。
  「糖尿病と癌に関する提言」が日本糖尿病学会と日本癌学会から出されています(別記)。癌予防のためには、やはり食事・運動療法を基本にした血糖コントロールが大事なことが、この表からも分かります。
  そして、糖尿病の方は治療のために通院することはもちろん、癌検診も忘れずに受けることが大事です。糖尿病の方に限らず! 糖尿病の方は必ず!年1 回、検診を受けましょう!
 
                                      (内科医 加藤幸)
「糖尿病と癌に関する提言」
日本糖尿病学会と日本癌学会

・糖尿病は、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌のリスク増加と関連
・ 健康的な食事、運動、体重のコントロール、禁煙、節酒は糖尿病および癌の予防につながる
・ 糖尿病の人は、科学的に根拠のある癌検診を受診することが推奨される。糖尿病で肝炎ウイルスが陽性の場合には、肝臓癌のスクリーニングを受けることが推奨される
・ 特定の糖尿病治療薬と癌との関係については、はっきりとした結論は得られていない。医師の指示に従って、良好な血糖コントロールを維持することが大切

 今や、糖尿病は国民病と言われ、誰もが「逃れきれない」可能性の高い病気。川久保病院では糖尿病外来を設けており、担当医は加藤幸先生です。加藤先生に、“糖尿病とはどんな病気か”や“糖尿病の予防方法”などについて、3 回にわたりお話しいただきます。
 皆さん、こんにちは。今号から3 回にわたり「糖尿病」に関してお話しすることになりました。せっかくですので、日ごろ、皆さんに「伝えたいけれども、伝えきれていない」と思われる分野に触れてみました。
 はるか昔、人類は厳しい食糧事情の中を生き抜くため、乏しい食物から得られるわずかなエネルギーをできる限り効率よく吸収・利用し、無駄なエネルギーは使わず、余ったエネルギーはすべて体の中に脂肪として蓄えておく仕組みが体内にできあがっていきました。この結果、「倹約遺伝子」を持つことになりました。日本人は3 人に1 人が、この倹約遺伝子型です。
 この遺伝子を持つ人が、食べ過ぎ、運動不足、摂食パターンの異常などの生活習慣になじんでしまったとき、肥満になると考えられています。肥満が生活習慣病の1 つに挙げられるのは、こうした理由からです
 肥満は生活習慣病だと、日ごろから認識しておくことが重要です。たとえ遺伝的に肥満体質であっても、肥満は必ず予防できるからです。肥満を予防する方法は、食事療法、運動療法が極め付け! と思うでしょうが、実はこれから述べる「行動療法」がもっとも大切かもしれません。
 肥満につながる生活習慣・行動をはっきりさせて、その改善をめざす・・・・それが行動療法です。まず、問題となる習慣・行動を分析し、次いで、そう行動させている誘因は何かを明らかにしてから、誘因に対する肥満者の反応を改善するようにします。
 問題となる行動は、たとえばストレス解消の“気晴らし食い”や“イライラ食い”、家族の食べ残しをもったいないと口にする“残飯食い”(代理摂食)、人の勧めを断りきれない“つきあい食い”、目の前の食物につい手が出てしまう“衝動食い”など、思いあたる人が多いはずです。無意識のうちに、こうした行動をとり続ける肥満者がほとんどなので、行動療法ではまず、「食事日記」を書いてもらい、自分の行動の異常に気づかせます。
 食事の開始・終了時刻、食事内容(可能な限り詳しく)、おおよそのエネルギー量、食事した場所、どんな場所で食事したかなどを、その日のうちに記録してもらいます。毎日の生活をグラフ化し、食事の偏りをみつけやすくする方法もあります。食行動をできる限り客観的に評価し、問題の行動を改善するようにするわけです。毎日の体重の記録をグラフにし、どれだけ効果があったかを観察するのもいいでしょう。
 肥満は生活習慣病であることを忘れずに、いつも前向きに、体質とライフスタイルの改善に取り組んでほしいのです。そうすれば必ず< 健康でスリム> という目標に到達できるはずです。
           (内科医・加藤 幸)